自由という名の攻防
今日は予算の話
前回の話で予算の振り分け方について言及した。
今回は少し詳しく説明したい。
予算の振り分け方として参考になる図がこれだ。
図1 6つのS
この図はスチュアートブラント氏が考えた家の性質をわかりやすくまとめた図である。
言いたいことは家はいろいろなものの集合体でできているが,その一つ一つの機能や寿命がちがうということ。
それを線の太さであらわしている図である。直感的に理解しやすい。
家は物質だ,いつか朽ちる。
建築によっては100年単位で保たれるものもあるが,メンテナンスは必須であるし,持ちのいい部分と持ちのわるい部分がある。
例えば,名作住宅に「住吉の長屋」というものがある。
図2 住吉の長屋 (安藤忠雄建築研究所 Tadao Ando)
この住宅は1970年代に竣工している。
この偉大なる先例をとって考えてみよう。
構造は鉄筋コンクリートで丈夫かつ長寿命だ。
現状でもその地に立ち続けている。
次にデザインも現在において古臭さは感じない。シンプルかつ滋味深さがある。
間取りも冒険性にあふれ,これも時の流れによる劣化はない。
まさに名作中の名作だろう。
しかし設備面ではどうだろう。
冬は寒く,夏は暑いことで有名なこの家だが,エアコンなどが導入されているらしい*1
このエアコンは設置以降劣化していないだろうか。
またはキッチンはどうか?置き型のコンロを使用しているようであるが,最新のコンロと比較すると陳腐化している点は否めないだろう。
設備は建築に比べ,部品の劣化が早く,また技術の進化から製品の陳腐化も早い。
住宅というものは,交換が生じるだろう。
そう考えると,設備に費用を割き,構造の費用を抑えるのは,家全体の質を考えると釣り合わない。
このように費用をかける部分と,抑える部分をしっかりと把握し,検討することが満足のいく計画のためには重要である*2
そして,そのメリハリの利いた建築計画には,計画の自由度が重要になる。
この点については建築家や工務店が一歩有利だ。
なぜかと言えばハウスメーカーでは一般的に使用する建材は統一されており*3,この部分的な予算のチョイスが難しいからである。
自由度が高い分,選択の責任と綿密な検討が必要なのである。
*1 くわしくは,本で
*2 とはいえ実際は設備もあまり価格を落とすと陳腐になる。
生き方も建築もバランスが重要で,あえてバランスを大きく崩すことで、成立するものがある。結論,一生懸命考えないと難しい
*3 実際は,やろうと思えば大手ハウスメーカーでもできる。
しかしかなりの努力と根気と熱意が必要で,要するに一生懸命考えないと難しい。