人の目には何が見えるか
今日は余談です
web内覧会の途中ですが,
内覧会を続けすぎて単調になってきたので,
今日は余談の日にします。
我が家にはスキップフロア的な空間があります。
私はこうした余白が豊かさを引き出すと考えています。
こういった空間の何がどう豊かさにつながるのかちょっと考えてみたいと思います。
そのためにまず人の目の見え方について考えます。
人の目は不思議なもので特定の条件を好ましく感じ,特定の条件を落ち着かないと感じます。
例を出しましょう。
これはスイッチという同じ属性であり,樹脂製という同じ属性です。
なのでこの三つのモノは一つの塊としてみます。
しかし,色や質感,記号の形(コスモとアドバンスとSOSTYLE)が違うので,
違和感を抱いてしまいます。
こうした連続の中の不連続に違和感を抱く性質は危険なものを見分けるために身についた人の目の力です。
あえて違和感を作って刺激的なものにするという使い方もできますが,落ち着きたい家には基本不適切です。
ですので,できる限り属性は整えた方が気持ちのいい空間になります。
ただし,属性には形のほかに質感や色など様々なものがありますので,
色だけをそろえるよりは質感(自然素材かそうでないか)や
形も整えた方が基本的には気持ちのいい空間になると思います。
しかし,人間は不便なもので刺激が強いと落ち着けなくなる一方で,
刺激が少なすぎるとつまらないと感じてしまいます。
サビのない歌やサビばかりの歌のようなもので,
ただ連続するのではなく,変調(不連続)がないと名曲にはならないのです。
いい音楽にはAメロからサビへの流れがあるように,適度でかつ自然な抑揚が必要です。
それを生み出しやすいのがスキップフロアです。
床は基本連続している方が気持ちいいですが,ただ連続しては単調になりますからハズシとしては非常に有効です。
また,広さという視覚的にもスキップフロアは有効です。
本来であれば壁を使って空間を分ける必要がありますが,スキップフロア的な高さの操作があれば,それだけで空間が分けられます。
床の連続を切っているためです。
狭小住宅ではこの縦の操作やガラスを使ったいわゆる「ヌケ」と呼ばれる横の操作で,
本来であれば,狭いはずの空間をあたかも広いかのように錯覚させるのです。
…とはいえどう感じるかの感覚は人によって微妙に違います。
冷たい感じが好きな人もいれば温かい感じが好きな人もいるでしょう。
人によって好きな音楽が違うようにフィーリングのあった空間を作る建築家を探すことは大事だと思います。
ちなみにスキップフロアは土地の高低がある場合は自然に沿う形でスキップフロアになるため問題ないですが,
我が家のように平坦な土地から無理にスキップフロアを作ると構造面の負担が大きく,
その負担をさらに建築構造的にねじ伏せるためにかなりの金銭的負担がかかります。
構造的にも安定しないので,正直お勧めしません。
ある意味土地の形という自然に逆らう形になっているということですね。
一番オススメするのは小上がりです。20~30cmの段差であっても十分に空間は切れますから,平坦な土地では構造的にも負担の少ないこの方法を使う方が妥当です。
例を示します。
(引用文献 ダイシンビルド ヴァンガードハウス 設計 堀部安嗣氏)
この家では,ダイニング部は土間になっていますが,リビング部との間を数十センチの小上がりを作ったことと素材を変えたこと,造作棚を挟んだことで連続を切っています。
これだけで単なるリビングダイニングではなく,空間に抑揚が出るわけなんです。
堀部さんはよくこの手法を使われていますが,狭い家ではおすすめの手法です。
ちなみに私は建築のプロでもなく,ビギナーですらないただのファンです。
本日の内容は話半分で聞いてくださいね。
ではまた次の話でお会いしましょう。
おまけ
リビングの気持ちのいい連続の中に燦然と輝く違和感(スイッチプレート)